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【漫画】観測者タマミ/井田ヒロト

観測者タマミ (1) (角川コミックス・エース 275-1)観測者タマミ (1) (角川コミックス・エース 275-1)
(2010/04/03)
井田 ヒロト

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箱の中にもともとあった様々な可能性のなかから
観測者が無意識に1つを選び出し
観測した瞬間に1つの可能性に収束させ実存化させている――といったところか
(1巻より)


新作「バカが全裸でやってくる」のあまりにタイトル通りな表紙で書店の新刊コーナーにおいて異彩を放ちまくっていた井田ヒロト氏の作品です。(この作品もレビュー予定)井田氏の特徴の一つとして、キャラクターの卑屈な表情や下衆な表情がやたらに上手いことを推したいと思います。女の子もとても可愛いのですが、井田氏に関しては男性キャラクターの方が輝いているように感じられます、ゲス顔のお陰で。そして忘れてはいけないのが、オマケの面白さ。先日紹介した美川べるの氏と、この井田氏は単行本のオマケが非常に楽しみな漫画家として個人的にはトップクラスに入ります。@バンチで連載していた「誰かカフカを守って」のおまけ「群馬を語る」シリーズからにじみ出る自虐の入り混じった群馬愛が素晴らしく、むしろこれも連載してほしいくらいです。



主人公・華光院征一郎は良家の子息子女が集う名門大学に通う、人望厚く品行方正なお坊ちゃま・・・というのは彼の表向きの顔であって、本当は1日食費300円で乗り切る極貧青年にしてそもそも大学生ですらない。彼は自分が「支配される側」に生まれついたことを自覚したうえで、名門大生という「支配する側」に成りきって周囲を騙し、本物の「支配する側」になろうと画策する詐欺師であった。
ある日征一郎は、大学の友人・安園の代役として、真明タマミという少女の家庭教師を務めることになる。そして、タマミが不思議な能力を持っていることを発見する。何も無い箱の中に、彼女が「○○が入っている」と認識し、その箱を開けたとき、それが現実になってしまうのである。しかもタマミ自身はこの能力に気付いていない。これは使える―そう考えた征一郎は、本来のタマミの家庭教師である安園を蹴落とすために、タマミの能力を使って安園をロリコン変質者に仕立て上げようとする。この計画を完遂するのに必要なことは2つ。征一郎を警戒している安園を騙し、隙を突くこと。そして、自らの持つ能力に無自覚なタマミ自身をも騙すこと。
征一郎は這い上がれるのか?そして本当の「支配する側」になれるのか?イカサマギャンブル・因縁の親族との対峙・真明家家宝の盗難など様々な事件に巻き込まれる中、敵を騙し、味方を騙し、タマミを騙し、舌先三寸で乗り切る底辺詐欺師の物語。


この作品の特徴は、まずタマミの能力の面白さにあるでしょう。この能力、実は箱だけでなく、扉の閉まった部屋に対しても有効です。作中では、征一郎が以下のようにその要点を整理しているので引用しておきます。
 ①征一郎が騙しても、征一郎が意図したものが出てくるのではなく、あくまでタマミが想像したものが出てくる
 ②密閉空間の中、もしくは未観測の物のみ変化させられる
 ③2つの未観測空間の間で中身の瞬間移動が出来る
 ④箱の中身をタマミ自身が確認したときにのみ発動する
③について補足すると、箱Aの中に物体a、箱Bの中に物体bが入っている状態で、タマミが「箱Aには物体b、箱Bには物体aが入っている」と信じて箱を開けた場合、aとbが入れ替わる(箱Aにはb、箱Bにはaというタマミの誤信と一致する結果になる)ということです。
とはいえ、この能力だけならSF作品としてはありがちな範疇でしょうが、本作は「タマミが自分の能力について自覚が無い」点がポイントです。そのため、能力を使えと命令したり、タマミが自主的に能力を使うことはない。征一郎が知恵とハッタリとその場しのぎをフル活用して、「タマミの能力が発動する状況」を作り出さなければならないのです。しかもタマミは従順に家庭教師の言う事を聞くいい子ちゃんではないので一苦労です。タマミの絶妙なクソガキ感と征一郎の強かさが物語にアップダウンを加えており、設定の難しさに比して読み易い作品となっています。

また、冒頭で井田氏のオマケの面白さについて述べましたが、そのセンスが十全に活かされた、いわば日常回も存在します。例えば、征一郎尾行回(第5話)にて、征一郎が近所のおばちゃんから包丁をゴミに出す方法が間違っていると突き返されたのを目撃したタマミが、「さっきコードナンバーO-BASANから武器も渡された・・・これで今度の大統領暗殺はいちころなんだぜ」と盛大に征一郎=テロリストの妄想をしたりします。文面だけ見ると滅茶苦茶なうえあまり面白そうに思えないかもしれませんが、私の文章力が乏しいだけであって、実際には征一郎の行動とタマミの勘違いが妙にかみ合っており秀逸です。その直後にシリアスな展開を控えており、こうしたコミカルな場面がワンクッションになっていることも、緩急がついて読み易い理由の一つといえるでしょう。さらに、最終章の直前には打ち切りを食らった漫画家(おそらくモデルは作者本人)のためにカオスなストーリーを考えるというぶっとんだ話もあります。

井田氏はこういった自虐ネタが非常に濃く、何とも癖になる作風の漫画家さんです。そのため、一度ファンになると作家買いする方も多いのではないかと思います。井田氏の作品はどれもお勧めなのですが、特にとっつきやすく作風が分かり易いこの作品をまずは手に取ってみては如何でしょうか?

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