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しげくまにっき

漫画などのご紹介をしようと思います

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【漫画】観測者タマミ/井田ヒロト

観測者タマミ (1) (角川コミックス・エース 275-1)観測者タマミ (1) (角川コミックス・エース 275-1)
(2010/04/03)
井田 ヒロト

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箱の中にもともとあった様々な可能性のなかから
観測者が無意識に1つを選び出し
観測した瞬間に1つの可能性に収束させ実存化させている――といったところか
(1巻より)


新作「バカが全裸でやってくる」のあまりにタイトル通りな表紙で書店の新刊コーナーにおいて異彩を放ちまくっていた井田ヒロト氏の作品です。(この作品もレビュー予定)井田氏の特徴の一つとして、キャラクターの卑屈な表情や下衆な表情がやたらに上手いことを推したいと思います。女の子もとても可愛いのですが、井田氏に関しては男性キャラクターの方が輝いているように感じられます、ゲス顔のお陰で。そして忘れてはいけないのが、オマケの面白さ。先日紹介した美川べるの氏と、この井田氏は単行本のオマケが非常に楽しみな漫画家として個人的にはトップクラスに入ります。@バンチで連載していた「誰かカフカを守って」のおまけ「群馬を語る」シリーズからにじみ出る自虐の入り混じった群馬愛が素晴らしく、むしろこれも連載してほしいくらいです。



主人公・華光院征一郎は良家の子息子女が集う名門大学に通う、人望厚く品行方正なお坊ちゃま・・・というのは彼の表向きの顔であって、本当は1日食費300円で乗り切る極貧青年にしてそもそも大学生ですらない。彼は自分が「支配される側」に生まれついたことを自覚したうえで、名門大生という「支配する側」に成りきって周囲を騙し、本物の「支配する側」になろうと画策する詐欺師であった。
ある日征一郎は、大学の友人・安園の代役として、真明タマミという少女の家庭教師を務めることになる。そして、タマミが不思議な能力を持っていることを発見する。何も無い箱の中に、彼女が「○○が入っている」と認識し、その箱を開けたとき、それが現実になってしまうのである。しかもタマミ自身はこの能力に気付いていない。これは使える―そう考えた征一郎は、本来のタマミの家庭教師である安園を蹴落とすために、タマミの能力を使って安園をロリコン変質者に仕立て上げようとする。この計画を完遂するのに必要なことは2つ。征一郎を警戒している安園を騙し、隙を突くこと。そして、自らの持つ能力に無自覚なタマミ自身をも騙すこと。
征一郎は這い上がれるのか?そして本当の「支配する側」になれるのか?イカサマギャンブル・因縁の親族との対峙・真明家家宝の盗難など様々な事件に巻き込まれる中、敵を騙し、味方を騙し、タマミを騙し、舌先三寸で乗り切る底辺詐欺師の物語。


この作品の特徴は、まずタマミの能力の面白さにあるでしょう。この能力、実は箱だけでなく、扉の閉まった部屋に対しても有効です。作中では、征一郎が以下のようにその要点を整理しているので引用しておきます。
 ①征一郎が騙しても、征一郎が意図したものが出てくるのではなく、あくまでタマミが想像したものが出てくる
 ②密閉空間の中、もしくは未観測の物のみ変化させられる
 ③2つの未観測空間の間で中身の瞬間移動が出来る
 ④箱の中身をタマミ自身が確認したときにのみ発動する
③について補足すると、箱Aの中に物体a、箱Bの中に物体bが入っている状態で、タマミが「箱Aには物体b、箱Bには物体aが入っている」と信じて箱を開けた場合、aとbが入れ替わる(箱Aにはb、箱Bにはaというタマミの誤信と一致する結果になる)ということです。
とはいえ、この能力だけならSF作品としてはありがちな範疇でしょうが、本作は「タマミが自分の能力について自覚が無い」点がポイントです。そのため、能力を使えと命令したり、タマミが自主的に能力を使うことはない。征一郎が知恵とハッタリとその場しのぎをフル活用して、「タマミの能力が発動する状況」を作り出さなければならないのです。しかもタマミは従順に家庭教師の言う事を聞くいい子ちゃんではないので一苦労です。タマミの絶妙なクソガキ感と征一郎の強かさが物語にアップダウンを加えており、設定の難しさに比して読み易い作品となっています。

また、冒頭で井田氏のオマケの面白さについて述べましたが、そのセンスが十全に活かされた、いわば日常回も存在します。例えば、征一郎尾行回(第5話)にて、征一郎が近所のおばちゃんから包丁をゴミに出す方法が間違っていると突き返されたのを目撃したタマミが、「さっきコードナンバーO-BASANから武器も渡された・・・これで今度の大統領暗殺はいちころなんだぜ」と盛大に征一郎=テロリストの妄想をしたりします。文面だけ見ると滅茶苦茶なうえあまり面白そうに思えないかもしれませんが、私の文章力が乏しいだけであって、実際には征一郎の行動とタマミの勘違いが妙にかみ合っており秀逸です。その直後にシリアスな展開を控えており、こうしたコミカルな場面がワンクッションになっていることも、緩急がついて読み易い理由の一つといえるでしょう。さらに、最終章の直前には打ち切りを食らった漫画家(おそらくモデルは作者本人)のためにカオスなストーリーを考えるというぶっとんだ話もあります。

井田氏はこういった自虐ネタが非常に濃く、何とも癖になる作風の漫画家さんです。そのため、一度ファンになると作家買いする方も多いのではないかと思います。井田氏の作品はどれもお勧めなのですが、特にとっつきやすく作風が分かり易いこの作品をまずは手に取ってみては如何でしょうか?
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【漫画】ストップ!!ひばりくん!/江口寿史

ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション1ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション1
(2009/07/16)
江口 寿史

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「いやーしかし女の子ばっかしのきょうだいってのは はなやかでいいですねーっ」
「女の子ばかりじゃない・・・・・・あれは男だ 長男のひばりだよ!」
「う うそ!! あっあれがおとこ!?」


昨今では、女の子の格好を(自主的か強制かを問わず)していて、しかもそれが似合っている少年のことを「男の娘(おとこのこ)」と呼ぶそうです。そのうえ、その男の娘をテーマにした雑誌も存在します。しかしながら、そのような男の娘萌えの風潮が強まったのは、所謂「オタク文化」が多様かつ比較的ポジティブに捉えられるようになった2000年代以降のように思われます。そんな今だからこそ、是非勧めておきたい偉大なる男の娘の先駆けがこのひばりくんなのです。なんと第1話は1981年。実に30年以上前の作品です。作者・江口寿史氏は恐ろしい御人だ・・・



女で一つで育ててくれた母を亡くした坂本耕作は、母の知人である大空家に引き取られることとなった。連れて行かれた大空家は極道一直線のやくざ一家。耕作は当初おびえていたものの、美人揃いの娘たち、つぐみ(大学生)・つばめ(高3)・ひばり(高1、耕作と同級生)・すずめ(小学生)を見て気を取り直す。中でもひばりが気になる耕作だったが、なんとひばりは男の子であった!しかも学校では女で通していてみんなのマドンナ。耕作の学校生活は、青春は、色々大丈夫なのか?


以上のあらすじから同性愛的な展開を予想する方もいるかと思いますが、大空組の面々や、耕作とひばりが所属するボクシング部の人々が織り成すドタバタ劇が各話の基本となっており、同性愛要素はあくまでギャグとして盛り込まれています。掲載誌がジャンプということと、江口氏の描く女の子がものすごく可愛いことを踏まえれば、男の娘とのラブコメ(?)とはいえ、男性読者向けなのかもしれません。もちろん女性でも楽しく読むことができますが。

実はこの作品、掲載時には未完で終了しており、2009年に発刊された完全版(上記リンク参照)で初めて加筆修正された最終話が発表されました。当時の最終話が1983年なので、約25年かけての完結というわけです。このようなことが可能になったのも、ひばりくんが根強く愛される作品であったことの賜物でしょう。では、何故ひばりくんは魅力的なのか?
それはひばりくんが単なる「女の子の真似をしたかわいい男の子」「女の子のように華奢な男の子」ではなく、かわいい女の子でありながらかっこいい男の子でもあったからでしょう。作中でも言及されていますが、ひばりくんは美少女揃いの大空姉妹の中でも一番の美少女(?)であって、文武両道で明るく飾らない性格のため男女問わずの人気者です。また、その愛らしさを妬む定番のイジワル女子も登場します。
つまり、ひばりくんは「少年漫画のヒロイン」としての要素をしっかりと押えており、その意味では紛れも無く「かわいい女の子」だといえます。その一方で、自分の姉妹のピンチには颯爽と駆けつけ、姉を泣かせた男たちを自慢の腕っぷしで成敗するという「少年漫画のヒーロー」としての側面も持っているのです。この両面性こそが、ひばりくんを単なる男の娘というニッチな存在に止めず、少年読者たちからも支持を得るに至らしめた原因なのではないでしょうか。

他にも作中では、大空組の子分その1で堅物のサブさん・子分その2で耕作を朝起こす際の顔芸が定番化した政二、ボクシング部のひばりに恋する椎名(もちろんひばりが男であるとは知らない)・マネージャーで耕作の片思いの相手でもある理絵ちゃん・やたらに濃いウザキャラ梶キャプテンなど、個性豊かな面々が登場します。テンポの良い丁々発止と一発ギャグがちょうど良いバランスで配分されており、30年前のものであるという古さを感じさせない作品です。ちょっと変わったラブコメを読んでみたい方は、如何でしょうか?

ちなみに、完全版の最終話加筆修正部分は当時の画風に極限まで近づけられており、江口氏の力量推して知るべしといったところです。さらに単行本や文庫版には載っていない未収録分も網羅されているため、今から読む方は是非完全版をお勧めします。

【漫画】まかまか/美川べるの

まかまか (1) (角川コミックス・エース・エクストラ)まかまか (1) (角川コミックス・エース・エクストラ)
(2010/08/04)
美川 べるの

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JKの喪教師いじりを本気になどしてみろ・・・!
次の日から全校中に晒され笑われ 虫系のアダ名を付けられ呼ばれ
PTAにチクられ 裏サイトでネタにされ
mi●iのファムプーリ学園コミュにエロ虫敦志トピを立てられ
顔写真が流出するんだぞ!
発言に気を付けろイケメン太郎!!
(1巻より) 



女性ギャグ漫画作家は数あれど、安定したクオリティーの作品をコンスタントに連載し続けているという点において美川べるの氏・通称ミカベルは凄いの一言です。美川氏の作品はどれも非常に面白いのでお勧めなのですが、絵柄がやや古かったり女の子向けの雑誌に連載されているせいかホモネタ(ただしギャグなのでホモネタが苦手な方も普通に読めます)が多かったりするため、最もとっつき易い本作をご紹介します。

モテる男女を目の敵にする極度に屈折した教員・速見敦志は美少女揃いの女子校「ファムプーリ学園」に赴任する。担任するクラスのクセモノ女子5人組が在籍する「帰宅部」の顧問を務めることとなり、
 ①萌え系気取って顔に貼りついた笑顔が薄気味悪い「美咲亜弥」
 ②影が薄くて目立つのに必死な低身長おかんキャラ「桃井乃々」
 ③独りでツッコミを頑張る「桐生沙有」
 ④下ネタ上等な女装少年「小鳥遊真樹」
 ⑤速見に惚れてしまい彼を神格化するストーカー系女子「牧島昂」
と彼の学園生活が始まった。

以上のあらすじと、上にある1巻の表紙を見ると、いかにも「萌え系学園漫画」かと思われがちですが、そこはミカベル作品。速見教員は徹頭徹尾「モテる奴は死ね」を信条としており、それは我が身も例外ではありません。クリスマスを楽しく過ごそうと誘う生徒に猛反発し、上述の現役美少女女子高生・牧島昂からの熱烈なアプローチも「喪男(モテない男)に対する恋愛系の精神攻撃」とみなし半ギレ、青春を謳歌する若者が集まる学園祭を中止にしようとする・・・と徹底的に自分を含む周囲のフラグを折りまくる絨毯爆撃を仕掛けています。こう書くとまるで彼がボケキャラのようですが、上記の女子高生5人組に対してのツッコミもこなします。ミカベル作品では、キャラクターのうち「常にボケ担当」と「常にツッコミ担当」がごく少数、「どちらもこなす」が多数を占めています。そのため、ボケツッコミのテンポの速い応酬が繰り広げられることとなります。個人的には、この勢いこそがミカベル作品全体に共通する魅力であると思っています。
そしてもうひとつの特徴が台詞の濃さと面白さ。面白さを説明するのに「面白さ」という言葉を用いるのは説明になっていないことは重々承知ですが、もはや「面白い」としか言えない、言わざるをえないのです。例えばクリスマス会を行うことになったシーンでの速見教員の台詞を引用します。

嫌だ!
当日じゃなかろうが メンツがクソだろうが クリスマスに乗っかった時点で負けだ!
俺をそこらの低脳カップルと同じレベルに堕とすつもりか小鬼共!
何がケーキだチキンだプレゼントだ外でやれ!できれば地球の外!
俺は毎年12月は豆と米と煮しめしか食わん!
いいか俺の前で七面鳥でも食ってみろ 食い終わるまで後ろでウンコの話ばっかしてやるからな!


さらに夏のプールについては

何がプールだ!水着だ!開放的なサマーリゾートだ!
こんな調子乗ったカップルがプカプカピチャピチャアメンボと一緒に浮いたり沈んだりする水槽なんぞ存在自体罪(ギルティ)!!
鮫を放て!カンテン入れろ!!ホタテと間違って塩素食え!!
俺は憎む!プールを憎む!
こんなもん校内に建てる位ならなんとなく捨てるに捨てらんないAmaz●nのダンボール箱置き場にした方がマシだ!
死ね!夏のリゾートっぽいもの全て死ね!


奇しくも2つとも速見教員の台詞になってしまいましたが、勢いと迸るテンションが伝わったでしょうか。女子高生たちにも迷台詞は大量にあるのですが、彼女たちのネタは台詞と絵を両方見ないと伝わりにくいものが多いため、是非手にとって確認してみて下さい。なお、ミカベル作品全般に言えることですが、電車内など公共の場で読むのは絶対に控えましょう。噴きだして恥をかきます。

【漫画】不死身探偵オルロック&プロフェッサーシャーボ/G=ヒコロウ

不死身探偵オルロック&プロフェッサーシャーボ (ブロスコミックス)不死身探偵オルロック&プロフェッサーシャーボ (ブロスコミックス)
(2001/06)
G=ヒコロウ

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不死身探偵オルロック完全版 (ビームコミックス)不死身探偵オルロック完全版 (ビームコミックス)
(2005/03/31)
G=ヒコロウ

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汗?ああ俺のウマ味成分の事ね
(不死身探偵オルロックより)

2月といえばヴァババーヴァッバレンターイン!!
男とオナゴとチョコと恋のド肝抜き差しトルネイドイベント!!
たまらんち!アバランチ!!網走番外地!!!
(プロフェッサーシャーボより)



暴風のような勢いのテンション、突っ込みが追いつかないカオス展開、詰め込みまくりの小ネタの多さ、奇抜かつどこかデフォルメチックでコミカルなキャラクターデザインが持ち味のG=ヒコロウ氏の代表作です。ヒコロウ氏はよく原稿を落とすうえ一度の執筆ページ数が少ないため、単行本化が物凄く時間がかかります。本作「不死身探偵オルロック」は、まず「プロフェッサーシャーボ」と同時収録で単行本化されました。しかしオルロックは途中までしか収録されず、その後長らく単行本未収録の話が残された状態が続きました。そして実に4年後、再び「プロフェッサーシャーボ」と併録の形で完全版が出版され、オルロックが全話単行本化されました。しかし!この完全版にはシャーボが全話掲載されていない・・・(4コマ→4ページ漫画になったのですが、4コマ時代が掲載されていない)つまり、両方読むには旧版と完全版を両方揃えねばならないのです。今入手するのは少々骨が折れるかもしれません。これから読む方は頑張って探して下さい!

さて、本来ならばあらすじを説明すべきなのですが、ヒコロウ氏の漫画の常として、あらすじとかストーリーなんてものは殆ど無いに等しく、そこにあるのはただひたすらハイテンションなカオス空間です。そこで、登場人物を簡単に紹介し、台詞を一部引用して雰囲気を感じ取って頂きたく思います。本当は画と一緒に見てほしいのですが、まあ雰囲気だけでも。


不死身探偵オルロック 主要登場人物

☆オルロック 
 「ショセンこの世は高学歴、高カロリー高配当ナノヨネ・・・分子と分母をひっくり返して大・・・正・・・解!!!」
 タイトルの通り、不死身の探偵。頭を潰されようが、体をぶった切られようが復活する。が、さほど強いわけでもない。作中では主人公なのに人気がないことを気にしている。  

☆アンデッタ
 「昔アルキメデスという偉いおっさんがおフロに入りました あふれるお湯を見ておっさんは外に飛び出しました 『皆殺しだー!!戦車出動ー!!!!』 かわいそうなアルキメデス」
 オルロックの助手。基本は唯一の常識人にしてツッコミ枠。普段は背が低く目つきの悪い幼女の姿(かわいい)だが、時折何の脈絡もなく背が伸び、ボケキャラと化す。

☆蟹江リカ
 「人生でホントに大切なことは授業じゃやんないことみたいよ?セロリの上ってご存じカナ?コンッ バトラー!!ゴ存ジカシラー!!」 
 独身女刑事。アンデッタ同様、普段は常識人寄りであるが、お酒が入ったりすると暴走キャラと化す。ボケに対して容赦なく発砲。

☆辻斬り108号
 「名言あったよな『血ガデルナラ殺セル』ジョンレノンの言葉だ」
 なんでも斬りたがる奴。体がツギハギで包帯を巻いているというロマン溢れるキャラデザの御仁。おっかないキャラとして登場したかと思いきや、予想以上のノリの良さを発揮する。ストーリーの進まなさを嘆くなど、時々妙に冷静かつ常識的なコメントを挟む。恋愛フラグへの自覚に乏しい。

☆中華姉弟
 「総員ー!!太れー!!」(姉)
 「ではまず私のターン!!無造作に三枚意思表示もなく伏せチャイナ!!」(弟)
 
 突如オルロックに勝負を申し込みに現れた姉弟。姉は本作一の暴走キャラ。描く絵本のサイコっぷりに定評がある。弟は一貫して常識的かつ真面目、ボケもタガが外れない範囲内。メガネをかけているせいでメガネ差別を受けたり、姉に振り回されたりなんか哀れ。



このように、基本的に縦横無尽なカオス空間に小ネタを密集させた漫画なのですが、きちんと1話1話で滅茶苦茶やりつつもオチがついているのは流石の一言。癖の強い漫画であることは確かですが、溢れるテンションにつられて何故か元気が出てくる作品です。一度読んでみてはいかがでしょうか。

【漫画】狼の口 ヴォルフスムント/久慈光久

狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)
(2010/02/15)
久慈光久

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太陽はすべて沈めてしまえ
灯り悉(ことごと)く斃(たお)れてしまえ
真っ白な山の暗がりの
けものの道を通るのだ
(1巻帯より)

hartaに改名予定の雑誌fellows!に連載中の中世叛乱活劇。個人的にfellows!作品の装丁の美しさ・格好良さはかなりのものだと思います。同雑誌で有名なのは「乙嫁語り」「乱と灰色の世界」あたりでしょうか。本作もその例に漏れず、作者・久慈氏の特徴である太い描線を最大限に活かした版画のような表紙になっています。カバーを外すと真っ黒の紙に金のインクで印刷がされており、また格好良い。既刊4冊を横並べにすると、全て黒+1色(1巻黄緑、2巻水色、3巻オレンジ、4巻紫がかったピンク)で統一されており、個人的には表紙買いとはこの漫画のためにある言葉かと思うほどです。参考までに、2~4巻の表紙画像をこの記事の末尾に貼っておきます。
しかしながら、この漫画ほど表紙の美しさに騙されてはいけない漫画もありません。まず、物理的・精神的グロ描写が苦手な方や、暴行描写(特に性的なもの)に嫌悪感を覚える方は絶対に読んではいけません。絵面はそこまでグロテスクではありませんが、精神的に中々堪えます。あらすじだけでも胸糞が悪くなる方もいるかと思いますので、この下は自己責任で読んで下さいね。


14世紀のアルプス地方、民衆はハプスブルグの圧制に苦しみ、シュヴァイツ・ウーリ・ウンターヴァルデンの森林三邦は自由を求めて叛乱を企てていた。そのためにはイタリアへと通じる「ザンクト・ゴッドハルト峠」の関所を通らねばならない。だがそこには、笑顔を絶やさぬ優男・ヴォルフラムという代官がいた。この番人の糸の様な眼は国外へと抜けようとする叛乱分子を見逃さず、何人たりとも通行は叶わない。いつしか難攻不落のその関所は「ヴォルフスムント」、すなわち“狼の口”と呼ばれるようになった・・・
ハプスブルグへの叛乱に失敗し、国外逃亡を図る男装の王女とその従者。国外の仲間に情報を届けようとする猛き女戦士や旅芸人の母娘。少年漫画ならば主要登場人物として快刀乱麻の大活躍ができそうな人々が、この関所ではヴォルフラムの掌の上で無残に踊らされ、蹂躙され、処刑され、関所の門前に吊るし上げられる。
しかし叛乱の徒は屈することはない。何人もの犠牲を払い、幾人もの仲間が罠にかかり、どれほどの仲間が拷問され処刑されようとも、虎視眈々と砦を崩す機を狙い続ける。そして、ついに南北からヴォルフスムントへの攻撃を開始した。難攻不落の要塞に、初めて叛徒が進撃する。残酷にして冷静、笑みを絶やさぬヴォルフラムにも焦りの色が浮かび、その死も目前に迫るかというこの時に、ヴォルフラムの上司にして大軍を率いる皇弟レオポルトが叛乱の報を聞きつけていた。砦の突破が先か、レオポルトの到着が先か。


上のあらすじを読んで分かる通り、本作品はとにかく人が無惨に死にます。義の心を持ち、自由を求めて立ち上がった人々が、お代官様・ヴォルフラムの手によってまさに塵芥のように殺されていくのです。だからこそ、読者は叛逆者たちと同じ目線に立ってヴォルフラムを憎めるわけなのですが。
とはいえ、この作品の魅力はその悪代官の残酷っぷりにあると言っても過言ではないでしょう。とにかく人の絶望を煽るのが上手く、「あ、通れるかも・・・」と相手の目に希望の光が宿った瞬間に地獄に突き落としたり、カマをかけたりと様々な方法で密行者をあぶり出します。(もちろんタダの商人や旅人は普通に通しています)そして、いざ叛乱軍が砦に突入しても一筋縄ではいきません。城の防御には凄まじい拷問じみたギミックが仕込まれています。壁を登って攻め込もうとすれば溶けた鉛をぶっかけられて一瞬にして顔面が焼け落ち、側面の山道から突入しようとすれば予めポイントを定められていた岩壁が頭上に崩れ落ち、地下から忍び込もうとすれば煮えた油が襲いかかり、いざ内部に入ったかと思えば床は落ちるわ格子で封じられるわ。二転三転してどちらが勝ってもおかしくない戦況が続きます。一応叛逆者側の主人公格として、ヴィルヘルム・テルの息子ヴァルターがいますが、彼も最後まで生き残れるか全く予測がつきません。


掲載誌fellows!が隔月刊のため、単行本の発刊ペースがかなり遅くやきもきさせられた本作ですが、hartaはほぼ月刊(年10回刊)とのことです。ということは、いま既刊1~4巻を読んでおけば新刊に間に合いますよ!残酷な物語ながら、容赦無い展開と独特の画風、いつか訪れる自由のカタルシスへの期待が相まって素晴らしい作品となっています。結末によっては大きく評価が分かれるかもしれませんが、今は待つのみ。繰り返しになりますが、グロテスクな描写・暴力表現が大丈夫な人はどうぞ。


↓表紙はこんな感じ
狼の口 ヴォルフスムント 2巻 (ビームコミックス)狼の口 ヴォルフスムント 2巻 (ビームコミックス)
(2010/10/15)
久慈光久

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狼の口 ヴォルフスムント 3巻 (ビームコミックス)狼の口 ヴォルフスムント 3巻 (ビームコミックス)
(2011/11/15)
久慈光久

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狼の口 ヴォルフスムント 4巻 (ビームコミックス)狼の口 ヴォルフスムント 4巻 (ビームコミックス)
(2012/09/15)
久慈光久

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【漫画】神聖モテモテ王国/ながいけん

神聖モテモテ王国[新装版]1 (少年サンデーコミックススペシャル)神聖モテモテ王国[新装版]1 (少年サンデーコミックススペシャル)
(2009/05/11)
ながい けん

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「何がモテモテ王国だ!!そんな事一度でももててから言え!」
「オンナスキー・・・わしらがなぜもてないかというと・・・
 何かの陰謀じゃよ!!」

「ハッピーな生き様さらしてんじゃねえ!!
 お前がこの部屋にすみついてからぼくの生活はどうなった!?
 ここん家はすでに回覧板の流通経路からも外されてんだぞ!!飛び石作戦かよ!」

(1巻より)
 


かつてサンデー読者(の一部)に多大な影響を与えつつもいつのまにか連載を終了した本作。
へにょへにょした宇宙人みたいな男・ファーザー(上に表示されている新装版1巻の表紙の銅像をご参照下さい)と、記憶喪失になった学ラン眼鏡坊主頭のさえない少年・通称オンナスキー。この2人が「ナオンにモテる」、ただそれだけの為に日々モテ作戦を決行する。果たして、男なら誰でも夢見た愛と徳による絶対王政・神聖モテモテ王国建国の日は来るのか!?そもそもファーザーの正体は何なんだ!?

この神聖モテモテ王国こと通称キムタク(公式略称です。15話くらいで決まった模様)のストーリー自体は、上記の通りファーザーとオンナスキーがナオンにモテるための行動を起こす(言いだしっぺは大体ファーザー)→ファーザーの奇行(本人は至って真面目なつもり)→失敗、の流れになっています。
ちなみに、作中では「ファーザー失敗フローチャート」として
 ①オンナスキーが止める
 ②やくざに殺される(しかし次の話では何事もなかったかのように復活している)
 ③(ナオンに)逃げられる
 ④警察につかまる
 ⑤大王(何故かオンナスキー宅の隣に引っ越してきた謎の組織のリーダー)のワナ発動
のマルチエンディング(全部バッドエンド)が示されています。悲惨。
さらに、⑤で挙げた大王の他にも、まるでK○Kのような形状の黒頭巾を被った大王の部下たち、つぶらな目をした変態にしてクズのトーマス、トーマスに良いように扱われるが無意識なクリーンヒットで返り討ちにするヘビトカゲ、記憶を失ったオンナスキーの様子を見に来てくれるいとこの美女・知佳さんなど、様々なキャラクターが登場し、その誰もが個性豊か。知佳さんは普通の人なのですが、読者はファーザーやトーマスの奇行を見ているので、「常識人」が最早個性のように感じられるのです。

しかしながら、本作最大の特徴は、作者のながいけん閣下の台詞回しにあるといえるでしょう。
台詞回しといっても、熱血少年漫画にあるような名言でも、ギャグ漫画に出てくる迷言でもありません。
何というか、もはや日本語として意味が通るかすら怪しいことも多い、なのに言わんとすることは分かるような気がする、そして何故か笑ってしまうのです。だからこそ、作者のながい閣下には固定ファンがいるのかもしれません。
上で引用した1巻冒頭のやりとりにもそのながい節の片鱗が垣間見えますが、その他の例として、作中で何種類か唐突に登場する歌詞(もちろんながい閣下の自作)のうちのひとつを紹介しておきます。


カップルバスターズOPテーマ「犬のカップルバスターズ」

 迷子の迷子のカップルさん
 あなたのお家を爆撃中
 『奇襲成功 我ガ方ノ損害ハ軽微ナリ』

 2番
 迷子の迷子のカップルさん
 あなたの回りを包囲した
 『明朝五時ヲ以テ男ノミヲ撃破セヨ。確カニ成功ヲ期ス』



ながいけん閣下の作品は非常に人を選ぶため、一様に皆さんにお勧めできるわけではありません。
しかし、今回引用した台詞や歌にニヤリと出来た方は是非読んでみて下さい。
そして全巻読破した後は、このキムタクの最終回以来約10年ぶりの新刊である「第三世界の長井」もどうぞ。より画風が洗練され、かつ濃厚になったながいけんの世界が読めます。ただし、必ず1・2巻はイッキ読みして下さい。こちらの作品も、いつかご紹介する予定です。

【漫画】大魔法峠/大和田秀樹

大魔法峠―マジカル血煙コミック (角川コミックス・エース)大魔法峠―マジカル血煙コミック (角川コミックス・エース)
(2002/11)
大和田 秀樹

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田中ぷにえちゃんは魔法の国のプリンセス!
修行のために人間界にやって来たのよ♪
ちょっぴりドジで腹黒くて
食物連鎖の頂点から草食動物を見くだすような氷の瞳のぷにえちゃん★
怒らせてはいけないわ!
物凄い肉体言語(サブミッション)が炸裂よ♥
(1巻裏表紙紹介文より)

この作品は数年前にOVA化され、中々の人気を博した魔法少女物語です。
作者は「ムダヅモ無き改革」で一躍有名になった大和田秀樹氏。
上で引用した単行本の紹介文があまりにも的確に本作の内容を説明しているため、どんな作品かは大体お分かりかもしれませんが、一応あらすじをご紹介しておきます。


ある日転校してきた女の子・田中ぷにえちゃんはなんと魔法の国の王女様だった!
天真爛漫な愛くるしさで転校早々に周囲を魅了するぷにえちゃん。
しかし彼女の存在を面白く思わない不良女子高生や王女の座を狙うライバルたちに狙われてさぁ大変!

と、ここまではごくオーソドックスな「魔法少女物」のお話。
しかし、ぷにえちゃんは魔法なんぞで戦いません。魔法はせいぜい撹乱に使う程度。
ではどうやってこの窮地を脱するのでしょうか?

「打撃系など花拳繍腿!!関節技(サブミッション)こそ王者の技よ!!!!」 ※花拳繍腿=華やかだが見かけだけの技のこと
豪語するぷにえちゃんは、「プリンセス脇固め」「プリンセスチョークスリーパー」「プリンセスアキレス腱固め」などの関節技で並み居る敵をバッタバッタとなぎ倒し、逆らう者は容赦なく潰してゆくのみ。
そして専制君主・ぷにえちゃんは今日も君臨し続けるのであった。


お分かり頂けたでしょうか?そう、これは魔法少女ではなく、覇王の物語なのです。
見た目と中身のギャップが激しいキャラクターたちによる、勢いあるストーリー展開が楽しめ、ストレス解消にうってつけの漫画です。
最後に、1巻以外の裏表紙紹介文も秀逸なので載せておきます。


田中ぷにえちゃんは魔法の国のプリンセス!
修行のために人間界にやって来たのよ♪
かわいい双子の妹たちと
血で血を洗う王位継承争いを繰り広げる
獣の瞳のぷにえちゃん★
怒らせてはいけないわ!
物凄い肉体言語が炸裂よ♥
(2巻裏表紙紹介文より)

田中ぷにえちゃんは魔法の国のプリンセス!
修行のために人間界にやって来たのよ♪
愛しいマスコットのパヤたんも平気で見捨てる
闇の瞳のぷにえちゃん★
怒らせてはいけないわ!
物凄い肉体言語が炸裂よ♥
(3巻裏表紙紹介文より)

田中ぷにえちゃんは魔法の国のプリンセス!
修行のために人間界にやって来たのよ♪
キュートな笑顔のその下に
コールタールのようなどす黒い野望を抱く
鬼の瞳のぷにえちゃん★
怒らせてはいけないわ!
物凄い肉体言語が炸裂よ♥
(4巻裏表紙紹介文より)



気になった方は、是非ぷにえちゃんの独裁者っぷりをご堪能下さい。

【漫画】デビルマン/永井豪

デビルマン (1) (KCデラックス (435))デビルマン (1) (KCデラックス (435))
(1993/12)
永井 豪、ダイナミックプロ 他

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おれはからだは悪魔になった・・・・だが
人間の心をうしなわなかった!
きさまらは人間のからだをもちながら悪魔に!
悪魔になったんだぞ!
これが!
これが!
おれが身をすててまもろうとした人間の正体か!



まず紹介したいのは、永井豪氏の代表作のひとつ「デビルマン」。今からもう何十年も前の作品にも関わらず、いつ読んでも色あせぬ衝撃を持つ怪作であり、私のバイブルです。

親友・飛鳥了の父の遺した研究からデーモンの存在を知った主人公の不動明は、襲い来るデーモン達と戦うためにデーモンの一体と合体し、デビルマンとなる。デーモンに呑み込まれて化物になってしまうリスクを背負って。
超人的な力を手に入れた明は性格が若干好戦的になりながらも(そのおかげでヒロイン・美樹からの評価は上がった)、人間の心を失わずにデビルマンとなることに成功し、妖鳥シレーヌ(個人的に永井作品一の美しさ。キャラクターデザインが素晴らしい)や食い殺した人間のデスマスクが甲羅に浮かぶカメのジンメンなど、禍々しいデーモンたちと死闘を繰り広げる。
一方、人を食らうデーモンの存在を知った人間たちは、デーモンが普段は人間のフリをして社会に紛れていると知り恐慌状態に陥る。情報が錯綜し、「隣人がデーモンかもしれない」という恐怖が中世の魔女狩りの再来を引き起こす。そしてそれは明の身近な人たちにも・・・
デビルマンは人間をデーモンから守りきることができるのか?そしてデーモンを率いる存在・サタンの正体とは?

この濃厚なストーリーがたった5巻、約1年で完結したことが信じられないほどに劇的な作品です。
永井氏の荒々しい狂気的なまでのペンタッチが実に効果的。
文庫版・完全版等において何度か加筆修正が施されていますが、まずは雑誌掲載時に最も近い「完全復刻版」(上のリンク参照」または1冊に全1000ページ超がまとまっている「愛蔵版」をお勧めします。

アニメを知っている方も多いかと思いますが、漫画は全くストーリー展開を異にする(というか、そもそもデビルマンの存在意義が違う)ので、アニメしか知らない場合はこの機会に。

このブログについて

昨今は、気になる漫画等がある場合に、ネット上のレビューを見てから買うかどうかを決める方が多いのではないでしょうか、私自身もそうです。

そこで、私が個人的に好きな漫画を取り上げてご紹介し、少しでも読むかどうかの参考になればと思い漫画ブログをはじめてみた次第です。

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