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【漫画】失恋ショコラティエ/水城せとな

失恋ショコラティエ 1 (フラワーコミックスアルファ)失恋ショコラティエ 1 (フラワーコミックスアルファ)
(2009/01/09)
水城 せとな

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サエコさん
俺は必ずショコラティエになる
何年かかってもいい 誰もが認めてくれるショコラティエになって
あなたの目にも 否応なく入るくらい有名になって
「あの時捨てるんじゃなかった」って
あなたに後悔させるんだ
それで 俺のショコラをこっそり食べたあなたが
「セ・ボン!」って 声をあげる
それが俺の夢だよ
たとえその声が 俺の耳に届くことはないとしても
(第1話より)





わたしは少女漫画をあまり持っていないのですが、これはむしろ普段少女漫画を読まない人にこそお勧めできる作品です。
恋愛を主軸にしている点では間違いなく少女漫画ド真ん中であるにもかかわらず、なんと第1話で主人公がバッサリ無惨にフられます。しかも理由が「元彼と復活したから」…つまり二股かけられてました。この物語は、マイナスから始まるのです。

この時点でお気づきかと思いますが、この漫画、主人公が男性です。しかも、前述の第1話はほぼ前日譚のようなもので、本編では26歳。登場人物たちも概ね20代以上です。そのせいか、キラキラした青春系の少女漫画よりも大分入り込みやすいかと思われます。ターゲット年齢も高いのではないでしょうか。
余談ですが、本作の単行本(2013年2月現在既刊6冊)は全て主人公・小動爽太が飾っています。まさかの男率100%。



では、あらすじをご紹介します。


主人公・小動爽太(こゆるぎ そうた)は、高校1年の時にひとつ年上のサエコさんに一目惚れ。サエコさんの彼氏に取り入ったり、同じ手芸部に入ったりと地道に接点を持ち続けた結果、高校を卒業して製菓学校へと進学した爽太は、遂にサエコさんと恋人同士に。2人で過ごす初のバレンタインデー、腕によりを掛けて手作りの逆チョコを作った爽太。しかし、バレンタインデーの前日、チョコを渡そうとしたところ
「ごめん・・・・・・受け取れない だってこれ めちゃめちゃ本気チョコだもん・・・・・・・・・ ごめんなさい 付き合ってる人がいるの」
まさかの二股暴露、そして撃沈。

失意の爽太だが、4年間も思い続けたサエコさんを今更諦められない。
そして   パリへと飛んだ。持ち物はとりあえずの旅支度と、なけなしのお金と、フランスのガイドブックと電子辞書、そして空港で買った「週刊少年マンデー」だけ。
この「少年マンデー」が奇妙な縁を呼び、本場パリのショコラティエ「ラトゥリエ・ド・ボヌール」で修業ができることに。

そして5年後。
テレビを見ながら朝の身支度をするサエコさんの目に飛び込んできたのは、「ラトゥリエ・ド・ボヌール」日本第1号店のショコラティエとしてインタビューを受ける爽太の姿であった・・・

チョコレートの香りに包まれると 否応なく彼女のことが頭に浮かぶ
俺も煩悩の塊みたいな男子の一人だから 全身邪な野望で満ち満ちてるよ
神経を研ぎ澄ませて ありったけの情熱を注いだ 俺の分身みたいなショコラを
彼女の口に含ませたい
彼女の体の中に注ぎ込みたい
彼女の細胞のひとつひとつにまで染み込ませたい
そんな淫らな野心が 俺をこんなところにまで 連れてきたんだ
どうしようもないね
(第1話より)


ここからショコラティエ・爽太の恋と執着の物語が始まる。
全てはサエコさんの大好きなショコラを作るため。サエコさんが、自分の作ったショコラを食べる、それだけのために。




さて、あらすじは以上です。とにかく主人公・爽太はサエコさんが創作意欲の原動力になっています。彼の作るショコラは見た目も中身も素晴らしい出来、多くのお客さんから愛されますが、本当はサエコさんのために作られたものなのです。重い!重いよ爽太!

しかし、爽太も伊達に一度フられていません。サエコさんに尻尾を振って尽くすだけでは、男のツボを心得た可愛い仕草で期待を持たされ、またあっさり捨てられることなど百も承知。
そこで、爽太は「悪い男」になります。内心どんなにメロメロでも、あえて突き放す。他の女がいるかのような素振りをみせてみる。巧みな恋の駆け引きが展開されているようで、爽太の内心は「サエコさんかわいい」「これで合ってるのかな」と振り回されまくっています。かと思えば、サエコさんも、明らかに大人になった爽太に振り回されているかのような・・・?

こうして概観してみると、あたかもサエコさんが男を振り回す悪女であるかのようにお思いかもしれませんが、実はそうでもありません。自分の魅力の見せ方を心得ており、男が求める女性像を知り尽くしているからこそ成せる業。彼女自身は、それが計算だとしても、美人すぎず普通っぽい、自分に素直で可愛らしい女性です。とはいっても、別に狙ってない男に対してもぶりっこ光線は出しまくります。流石。
爽太はといえば、自分の心を揺さぶるサエコさんの愛らしい一挙手一投足が計算されたものであることを知りつつ、「そんなところが可愛い」と認めています。爽太曰く、サエコさんは「時にはいい妖精で 時には悪い妖精」とのこと。


このような爽太とサエコの関係に、パリでの修行時代からの友人にして老舗ショコラティエの御曹司・オリヴィエ、爽太の経営するショコラティエの従業員・薫子さん、爽太の妹・まつり、ショコラティエとしてのライバルであり見た目ダンディなオネエ・リクドーさん(この人がかなりいい味を出している)、リクドーさんのショコラティエの寡黙な従業員・関谷、リクドーさんの誕生パーティーで知り合った健気なモデル・えれな 等の登場人物が絡んできます。
どの人物も人間味のある一面を持っており、完璧超人など一人もいません。だからこそお互いの思惑がうまく噛み合わず、読者はもどかしい思いを味わうことになるのです。これほど単行本の続きが待ち遠しい漫画はなかなか無いといっても過言ではないでしょう。

ちなみに、作者の水城氏は大のチョコレート好きとのことで、作中に登場するチョコレートも非常に美味しそうなものばかりです。個人的に、最近はショコラティエ巡りにハマッているため、一層面白く感じます。
読んで美味しい、そして苦いこの漫画、是非手にとってみては。
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